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もう冬だよだいたい十冊感想文

2019.12.02 20:50|読書感想文
12/9までキンドルアンリミテッドが三か月99円らしいので、体験版気分でプライムリーディング(アマプラ会員なら無料で読めるやつ)にも手を出し始めた今日この頃。


30万冊読み放題って言ってもジャンルが多岐にわたるので私が読める小説はゆうほどなさそうだけど、とりあえず地元の図書館に全然なかった高木彬光の神津シリーズがけっこう入ってるぽいので何にせよ登録するつもりではある。
プライムリーディングもキンドルアンリミテッドも探し方がよく分らんので何かおすすめあったら教えてくれると嬉しい。
以下最近読んだやつネタバレ注意。

・乃南アサ「風の墓碑銘」


面白かったー。地道な捜査をコツコツ続け、これという相手が見つかるとあとは呆気ないほど簡単にっていう、地味だけどさっぱりした終わり方。豆腐屋の息子が良いやつだったのが良かったのかもしれない。
奈苗さんの件は本当に乙すぎるというか相変わらず貴子は友人に恵まれない…。でも今思うと自分とこの愚痴をあけすけに話して昴一のこといいな~とか言ってたのは、貴子から「うちの彼氏も最悪なのよ~」って言葉を引き出して自分だけが吹こうじゃないと確認したかったんかなって…。

相変わらず滝沢とは相性いいのか悪いのか。お互い有能だし基本的に相性はいいけどお互い生理的に無理。みたいな感じなんだろうか…。最後にあだ名のこと教える展開くるかなと思ったけどさすがになかった。
昴一のメールは何なんこいつ???って感じだったけど最後は一応元鞘戻ったぽくてよかった。まあ目のことは本当にキツいと思うから同情の余地はある。またどっか飛んでいかないうちにさっさと結婚してくれ。

・風野真知雄「町の灯り」


ついに終わってしまった女だてらシリーズ。
一揆は失敗に終わったけど、まだその時じゃなかったということで比較的穏便に済んだのは不幸中の幸いなのかな…星河さんのことは残念だけど、やっとあの世でおこうさんと一緒になれたと思ったらそんな悲惨な最期じゃなかったと思う。
日の助と鈴音はお互い意識してるふうには全然見えないけど、まあ女将と板前が二人三脚でやっていくなら二人でくっついたほうが色々無難だろうなと思う。父親に対して「あんたが始めたことだろうが!」って言った(思った)のはやっと言ってくれた感。

・ピーター・トレメイン「アイルランド幻想」


全然知らないけどタイトルに惹かれて借りてみた。アイルランド伝承をベースにしたホラーテイストな短編集で面白かったー!
若干歴史のお勉強要素もあるんだけど、複数の話にまたがり順序立ててちょっとずつ説明してくれるのですごく分りやすい。「あっこれ前の話で言ってたやつ!」みたいになる。
個人的には因果応報・勧善懲悪感のある最初の「石柱」が好みだったんだけど、全体的には因果応報というより伝承を軽んじる者、信じず迂闊な行動をとった者が酷い目に遭うという感じで、そういうところが人による善悪など超越した自然現象っぽさがあった。人間のために造られた神様ではなく、あくまで古くからの自然が支配する土地というか。人間は巨大な自然の中に紛れ込んだちっぽけな存在でしかない、みたいな壮大な世界観だった。

・アーサー・コナン・ドイル「シャーロックホームズ全集7恐怖の谷」訳:小林司 東山あかね 注・解説:高田寛


あーまた前半で事件解決して後半で依頼人(?)の過去が明らかになるやつね、と後半はわりと消化試合みたいな感じで読んでたんだけどまんまとバーディ・エドワーズに騙されたって感じだった。普通にやらかして逃げるんだと思ってた…。
唯一「ん?」と思って読み直したところが工場長殺し(家族もろとも殺そうと爆弾しかけたけど不在だったやつ)のくだり。「その後結局殺されたけどマクナードがやった噂だけ」っていうやたら曖昧な書き方だな~と思ってたけど、新聞に書かせただけでどっかに逃がしたってことでいいのかな…?

前半の事件は襲撃で死んだことにした方がその後平穏に暮らせたのでは?と思ってたので、ラストで海に落ちたっていう事故も死んだと思わせる工作なのかなと一瞬思ったんだけど…。解説ざっくり見るに今作はモリアーティの脅威をアピールする話で、たとえ正義のためであっても「恐怖の谷」でやったことは帳消しにはならない、相応の罰が下った=ガチ死亡ってことなんかな。

・西條奈加「千年鬼」


プライムリーディング対象だったのでキンドルでガーッと読んだ。
ふとしたきっかけで鬼になってしまう人間の心を小鬼達が千年かけて見守る物語。「過去を見せる」という力は決して万能ではないし、知らない方がいい過去もある。それでも民が何度も立ち直れたのは、いつも辛い時小鬼が寄り添ってあげたからなんだろうなあ…。
世界は時に残酷で理不尽で神様も大したことできないし融通が利かない、それでも温かい気持ちになれるお話だった。

・大崎梢「配達赤ずきん」


プライムリーディング対象作品。
本屋さんが舞台の日常ミステリ、ということでほのぼの謎解きなんだろうなと思ってたら最初からわりと物騒で面白かった。

・川上未映子「マリーの愛の証明」


プライムリーディング。
文章と雰囲気は好きだけど内容はやっぱよくわからんかった。

・高木彬光「白昼の死角」


プライムリーディング。
法律の穴をかいくぐって次々奇想天外な詐欺を成功させていく悪の天才の物語。
頭悪いし数字はめっぽう弱いので手形やら株やらはよく分らなかったけど面白かった。しかしまあこれだけ派手な演出やってたら、そりゃいつか仲間がやらかすよなあって感じ。
日本人が潜在的に外国人に苦手意識や引け目を感じるという性分を利用するというのは見事だったけど、さすがに外国人、それも騙した相手に挑発的な悪戯を仕掛けるような相手の感情までは読み切れなかったのかなって感じ。あの取引先が詐欺が完遂する前にスペイン語解読してたらどうしてたんだ。

「暴力(というか殺人による口封じ)だけは絶対に使わない」というのが七郎の信条だったのに、最終的には周囲が屍だらけになったのは皮肉というか、犯罪の道を歩むなら結局必然だったということか。七郎はその頭脳と精神力で乗り切れても、凡人は自殺他殺問わず「殺人」という劇薬を使わないと七郎にはついていけないんだろうな。
天才的な頭脳で犯罪に勝利し続けることはできても、自分を慕う周りの人たちのことは誰一人幸せにすることができなかったというのがなんとも業が深い。木島も九鬼も七郎には劣るとはいえ馬鹿じゃないんだし、まっとうにやり直して幸せになる機会はいくらでもあっただろうになあ…。それでも自分から七郎に付いていっちゃうんだから、七郎の与える犯罪は麻薬のようなものだなと思った。

・太田忠司/田丸雅智「ショートショート美術館 名作絵画の光と闇」


半分くらいで挫折。タイトル的に最近よくある本当は怖い絵画的なやつかと思いきや「有名絵画で10のお題」を二人でやっていくみたいな感じだった。
尺的にどうもアイデア一発勝負になりがちで、ハマるネタなら面白いがそうでもない場合は「ふうん…」で終わる。アイデア自体は面白くてもやっぱり尺のせいかところどころ雑というかツッコミどころがちょくちょくある。
まあ軽い読み物としてならいいんじゃないかなとは思うけど、でも「名作絵画の光と闇」っていうサブタイトルはやっぱ私みたいな「怖い絵」に興味ある人を釣りたかっただけに見えて印象は良くない。本当に絵から受けた印象だけで作家が自由に書きました、って感じで絵自体の持つ光と闇は何も出てこないし。作家の作風も光と闇というほどはっきり別れてるわけでもないしむしろ光と闇要素どこ。

・乙川優三郎「闇の華たち」


全体的に仄暗い空気の中、最後にじんわりと希望が灯るって感じの短編集だった。
「悪名」と「冬の華」が好き。

◆という読書感想文でした。
「アイルランド幻想」を読んでるとどうしてもそっち系の音楽を聴きたくなって見つけた曲、めちゃ良いのでケルトやアイリッシュ音楽系が好きな人聴いてほしい…。ほんまにいいから…。
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古戦場だから十冊感想文

2019.11.17 17:30|読書感想文
フルオートで読書が捗る!
以下ネタバレ注意。

・有栖川有栖「ジュリエットの悲鳴」


いつもの真面目?なミステリ短編種かと思いきやふざけ気味の話もけっこうあって面白かった。「パテオ」のオチかわいそう面白い。
「登竜門が多すぎる」はワープロソフト虫太郎で笑っちゃった。ネタ商品を推してくるのかと思いきや作家あるあるネタみたいなのも楽しい。マイルール「参考文献で文庫本をあげてはならない」に(見栄をはるなよ)ってツッコミ入ってるやつとか。やっぱプロの作家でも参考文献に難しそうな学術書がいっぱい並んでるとクールみたいな風潮あるんだろうか…。

・乃南アサ「未練」


序盤は彼氏の存在がまるっと消えてるからえっ別れたん??それとも過去の話??と不安になってたけど四つ目の話でやっと出てきて安心した。古物屋の事件は結局最後まで見届けられなかったけどこの後解決しますよということでいいのかな。

・風野真知雄「別れ船」


「雨の季節の女」が印象的だった。藍色しか着せてくれない男、それが不満な女。一見そんなことで?ってなりそうだけど、そんなことすら許してくれないってことは他にも束縛があったんだろうなあ。
本筋の方ではいよいよ小鈴屋が目付けられちゃっていよいよ危なくなってきた感。

・風野真知雄「噓つき」


一気に話が動いて面白くなってきたー!
鳥居耀蔵という人は「悪いお奉行」としてかなり嫌われてたらしいけど、おこうさんや小鈴への優しさは本物に見えるんだよな~。幽閉を経て晩年は慕われるようになったらしいから根っからの悪人じゃないんですよということかな。

・アーサー・コナン・ドイル「シャーロックホームズ全集6シャーロック・ホームズの帰還」訳:小林司 東山あかね 注・解説:高田寛


ワトソンがいきなり妻と死別しててびっくりしたけど、ワトソンはホームズと出会ってわりとすぐ結婚して下宿先から出てったから、むしろ今の状態が本来のイメージに近いのかもしれない…?
前よりいっそうホームズの名声が上がって公になるとまずい重要な案件が増えてた印象。最後の「我々にも外交上の秘密があります」っていうセリフ好き。

・歌野晶午「魔王城殺人事件」


例の「児童書っぽい雰囲気の装丁だけど中身はがっつり殺人事件シリーズ」のやつだった。
軽い感じでサクサク読めた。ただこれといった不思議が少なく小屋に絡繰りがあるのはわりとすぐ分かるから勘のいい人ならすぐ気づきそう。アリ問題で「名前があることが観察者である人間の存在を示唆している」って言われた時の方がなるほどなってなった。

・村上春樹「図書館奇譚」


むくどりや置いてきた靴、犬やら意味深ワードがたくさんでそれぞれが何を暗示してるとかはよく分らんけど、「図書館の地下には牢屋があって知識をため込んだ人の脳を吸う」「多かれ少なかれどこの図書館もやってること、知識を貸し出すだけじゃ割に合わないでしょ」っていうネタは都市伝説っぽくて好き。

・乃南アサ「嗤う闇」


なんかめっちゃ古いシリーズかと思ってたけど2001年だったんですね。いや約二十年前なら古い方か。音道というか昴一の考え方がすごく今っぽくてこんな考え方の男性は貴重だなと思った。
一番最初の冒頭に出てきた親子はその後なんか絡んでくるのかと思いきや特に何もなかった。血のつながった親子でさえ難しいのに、赤の他人が親子のように世話を焼きたがるのはもっと難しいんですよってことなんかな。
沢木警部補はまた「鎖」に出てきたみたいなお坊ちゃまエリートかと思いきや最終的に懐いてて可愛かった。一つ目に出てきた金木もまた嫌なオッサンだったし音道もたまにはいい思いしないとね…いや本人は迷惑そうだけど…。

・歌野晶午「ジェシカが駆け抜けた七年間について」


レビューで「叙述トリック」「わりと反則では?」と言われてたのを読んじゃったのでまた視点が入れ替わってる系の叙述トリックなんかな~と読んでたんだけど…たしかにわりと反則では???っていうトリックでした。いやトリックというかなんというか…騙す相手は完全に読者だけで事件自体はめちゃシンプルというか…
でもまあエチオピア時間をいつも意識してるという話は何度も出てきたから、エチオピア独自の時間の数え方があるなら当然日付も?と予測できてしかるべきだったのかもしれない…いやでも反則では???感はたしかにある。まあサクサク読めたからたまにはこういうのも全然いいんだけど。

・風野真知雄「星の河」


副題からしてあれだし星川さんの死亡フラグがガンガンに立ってたのでまあそうよねって感じ…。最後の小鈴とのやり取り良かった。
日の助の正体については同僚の遺言もあるし仲間割れとかしたら最悪だなと思ってたけど、そこはわりと寛容な感じで済んでほっとした。いよいよ次で最後か…。
根岸シリーズに出てきた粟田がめっちゃ出世して娘のことも言及されてて嬉しかった~。椀田知恵蔵ってのは剛蔵の息子かなんかなのかな?椀田が脳筋タイプだから子供には「知恵」って付けたとかいう安直なパターンだとかわいい。でも粟田が七十ってことは根岸はもちろん椀田もたぶん亡くなってるんだろうなと思うとちょっと切ない…。

◆という読書感想文でした。

小野不由美「屍鬼」

2019.11.09 20:10|読書感想文
だらだら書いてたら微妙に長くなったので久しぶりに単独で。
大昔にアニメを観てたのでどういう話かはざっくり知ってたし登場人物も多いわりに把握しやすかった。ネタバレ注意。



・単純なゾンビVS人間ものではないとわかってるけど、「静信がヘラってなければヌルゲーだったのにな…」と思わずにはいられない。
村で特に権力のある御三家のうち一番手と三番手が真っ先に真相に気付いたんだから、そのまま結託して動いてたら勝ち確だったじゃんこれ。終盤の敏夫だけでも壊滅させるんだから。って思うとやっぱ屍鬼って本来は弱い生き物なんだなと思う。
日光を浴びると即アウト、遅刻=死で夜以外の活動は不可能ってのがきついよな~。人間に混ざって社会生活を送るのが難しい、かといって安定した収入がないと安全に休める場所の確保が難しい。
そして静信先生の小説難解すぎる…樅(もみ)が読めなくてしょっぱなからIMEパッド起動した…えっ皆これ普通に読めるの…?

・静信の主張「屍鬼が生きるために人間を襲うのは仕方ないよ(食物連鎖派)」までは分かるんだけど「それに人間が反撃するのは許せないよ」はどうしても納得できず、中盤の終わりくらいは何なんこいつと思ってた。人間が反撃するのもまた生きるためでは?黙って狩られろって??いたいけな中学生が死後の始末を自分でやるくらい追い詰められてるのに、おめーは全部知ってて説法するだけかよ!みたいな。

終盤の作中作でなんとなく分かった気がしたけど、静信の心境は「自分は善良で誠実であろうとしても世界は決められた役割以外求めない。外れるものは石を投げられる。だから自分はその枠外(=死)に行きたかった」…って感じなのかな。それで同じ「石を投げられる者」で、神に見放された者で、枠の外にいる屍鬼に、強烈な仲間意識を持った。屍鬼に同情していたというより同調、同一視していた感じがする。
だとすると「人間が屍鬼を攻撃するのは駄目」っていう一見筋の通らない主張が、「自分が攻撃されるのは嫌」っていう、きわめて単純、本能的な自己保身になる。自殺未遂をした静信は枠の中にいるのか外にいるのか今の位置があやふやだけど。

静信が偽善者扱いされるのにずっと違和感あったけど、静信は「どっちも傷つけあっちゃ駄目だよ、両方が生きる方法を模索しようよ」みたいなお花畑なことは言ってないんだよな。もっと鬼寄りなんだよな…。
静信も鈍い訳じゃないんだから敏夫が妻を人体実験に使ったことや郁子をけしかけたことを、「それほど敏夫が追い詰められてた」と簡単に推察できたろうし、友人という立場まで考えると自分が力になれなかったこと、一人で辛い実験をさせてしまったことを悔やんでいい場面でもある。
それでも敏夫を責めるばかりなのは、「自分の同胞(鬼)を攻撃したこと」に対する怒りが先に来ちゃったからだと思えば納得できる。敏夫と袂を別ってからも何か行動を起こす訳でもなく、真実を知りながら傍観するだけというのは屍鬼への消極的な協力と言っても差し支えないし。自分の手を汚すことを躊躇っていた臆病者というより、初めて見つけた同胞が敵陣営で混乱してたって感じ。

・終盤母親と寺男が殺される場面は「静信のとばっちりで殺されてひどい、可哀そう」と思う反面、彼らが静信に役割を押し付けた張本人であり、「肩書だけは立派なのに肝心な時は助けてくれない」という村人の憤りも尤もで自業自得にも見える。
でも母親も「室井の奥方」という役割に縛られていたといえるし、村人もほんの少し前に敏夫の捨て身のパフォーマンスでやっと屍鬼の存在を認めただけ。ここは紛れもなく人間VS人間で、世界が望む役割を迅速に演じなければどう思っていようと石を投げられる、枠の外に追い出されるという分かりやすい例だった。

静信が「結婚」という期待にだけは応えなかったのも、自分が誰かに「若御院の妻」と「跡取り」の役割を押し付けたくなかったからかな~。
母親についてもけっこう語るからマザコンかな?って最初は思ったけど、「室井の奥方」の役割について色々考えてたってことよね。自殺未遂の状況よく覚えてないけど(読み直そうにも分厚過ぎてどこか分からん)、「若御院まだ結婚しないんだね」「あんなことがあったから親も強く言えないんでしょう」みたいな会話があったから、もしかしたら見合い話とかが出始めたころだったのかもしれない。
その点敏夫はなんだかんだ尾崎家の通例通り村の外から嫁もらってるから、やっぱりちゃんと「世界の中」で生きている存在で、静信とは決定的に違っていた(と静信は思っていた)んだと思う。

父親も晩年になってから自分が役割を演じていたことに気付いて屍鬼のもとへ下ったけど、静信は敏夫の存在により高校あたりで気付いてしまったぶん絶望が早まったのかなぁ…。友達の新しい別の価値観に触れることで世界が広がるのではなく、世界の狭さを知って絶望が深まったのならなんとも皮肉な話。

・「正反対の存在」として敏夫の欠点も指摘されてたけど、報告を止めたことはたしかにそれなりに利があったしそれほどひどいやらかしだったとは思えなかった。基本的に有能。
でもその敏夫ですら結局村医者を継ぐことになってんだから、静信の絶望は「そんなに村が嫌なら出ていけばいいのに」で片付く問題じゃないんだろうな。村に戻る敏夫を見て「敏夫が無理なら自分なんてもっと無理」と感じたまである。

医療はどんどん進歩していくから敏夫は自分なりの工夫をする余地があるけど、坊さんの仕事で革新的な何かをやるのは難しいっていう、職業の違いからも静信の方が「役割を演じる」ストレスが大きかったのかもしれない。
敏夫は父親の応接室などを休憩室に改装して職員達に感謝され、先代と違って往診も嫌がらないと好評で毎日大繁盛。
静信は改宗した元信者にも寛大に接し、彼らを非難した父親に嫌悪感を抱いていたけど、現実的には父親のやり方が望まれている。善意で助けてくれる檀家を維持しなければ、寺は到底立ち行かないから…。

明確に静信が敏夫と自分を比較したり嫉妬したりみたいな描写はないけど、こういう色んな差を無意識に感じとってどんどん孤立していったのかなあ。なんというかこの二人、考えれば考えるほど出会わなかった良かった気がしてくる。それか敏夫が父親似の権威主義者でもうちょいバカなら、静信も能天気でいられたのかも…。

◆という感想文でした。
大昔に見たアニメでは夏野が起き上がってしかも人狼になってた気がするけど、原作では普通に死んでた。えらい大胆な改変したなと思うけど、夏野くんに特別な何かを期待してしまう気持ちはわからんでもない。かっこいいし。

だいたい十冊感想文

2019.11.03 20:20|読書感想文
◎ネタバレ注意◎

・吉永南央「糸切り」


あの手この手で壁の絵を手に入れようとするジェイコブ氏は、よくある「立ち退きさせたい業者VS地元住民」の構図を彷彿させてあんまりいいイメージなかったけど、弓削さんの「今意地を張って守ったとして、その後は?」という問いは尤もだなと思った。本当に古いものを守りたいなら、ただそばに置いておくだけじゃダメなんだなって。焼き物講座が面白かった。

・宮部みゆき「この世の春」


この時代なら狐憑きとか祟りとかで片付けられそうな心の病を、持てる限りの知識と調査で解き明かしていくのが面白かった。今なら幼少期の虐待による人格分裂、多重人格、みたいな感じになるのかな。
ただお館様の方はある程度説明がついてるのに、その原因になった父の方は「呪い」としか言いようがないのは「えっこっちはファンタジーで済ませるんだ?」って思っちゃったな…。まあでも多重人格みたいな心の話は現代でも未知数な部分が多いし、呪いというのもその延長のようなものということなのかもしれない。
この時代の人にとっては御館様の病気も呪いもどっちも似たような怪奇で、
現代の感覚では「多重人格=未知数なところはあるがそういう病気」「呪い=ファンタジー」みたいな認識が一般的だと思うけど、
何百年後かには呪いの方もある程度説明付くようになってるのかもっていう。

単独で調査することの多い半十郎や、権力があり物分かりのいい老獪石田様&千吉とか事あるごとに死ぬんじゃないかと不安になってたけど無事でよかった。新九郎は乙…なんだけど、お館様をせっついて病を悪化させたという意味では相応の罰を受けたってことなんかなあ。でも新九郎が突っつきまわして事態をガッと悪化させたからこそクジャが派手に立ち回ることになって正体が露見した感もある。ずっと停滞したままだとクジャが隠密に慎重に事を進めて永遠に尻尾出さなかったような気もする…。

タキが御館様とくっつくのはまあ定番というかそこだよね~って感じだけど、たまに暴走しちゃう若先生ルートも楽しいし大正義幼馴染半十郎ルートも捨てがたかった…半十郎幸せになってくれ…。

あとお館様の豹変ぶりが文字で読んでもすごいから映像で見たいと思った。二次元でも三次元でも役者さんの演技が光りそう。

・畑中恵「むすびつき」


しゃばけシリーズ十七…だったかな?
前世、転生がテーマで切ない話が多かった。メタ的にはそう簡単には死なんやろと思ってるけど実際若旦那はいつ死んでもおかしくない病弱っぷりだしね…。
最後の話で呆気ないくらい簡単に夕助さん死んじゃったけど、前世の記憶を持ちながら転生しまくるというのは考えようによってはかなりエグくないか?自分が何度も死んだところを覚えてるって相当きつそうだしいつか発狂するんではと思ったけど、本人の心持次第で忘れることもできそうだしいいのかな…。

・麻耶雄嵩「友達以上探偵未満」


久しぶりの麻耶雄嵩。
とんでもブラック要素を期待してたけど今作はそうでもなく、かなりライト向け、キャラ萌え層向けって感じだろうか。しょーもない脱線や井戸端会議は女子高生らしい(?)おしゃべりを意識してたのかもしれないけど本当にしょうもなくて読むのに時間がかかってしまった。そのくせあおはともかくももも女子高生っぽくないっていう。
謎解き自体は面白かったし、友達でありライバルという唯一無二の存在でありながらべったりしすぎない二人の関係も好きだった。

・アーサー・コナン・ドイル「シャーロックホームズ全集4シャーロック・ホームズの思い出」訳:小林司 東山あかね 注・解説:高田寛


今回も短編集。分厚いけど一つ一つは読みやすかった。「黄色い顔」が好き。
原作ホームズって改めてちゃんと読んでみると思ってたよりワトソンがしっかりしてるというか、ホームズもワトソンをかなり信頼しててわりと対等な感じなのが意外だった。っていうほどホームズ派生の作品に触れてきた訳じゃないんだけど。

・乃南アサ「最後の花束」


主に女のどろどろを描く短編集。個人的には「祝辞」が印象的だった。表題作の「最後の花束」はやけに主人公のことぼかしてるなと思ってたら「あ~~~~そっちか~~~~」って感じ。「あなた」でも「貴方」でもなく「貴男」って書くのはそういうことか…。
提灯の話は旦那がダメすぎた…。不倫相手に反発したり妻のこと庇うポーズだけはとりながら子供二人生まれてる間もずっと関係続けるってクズすぎ。こういうの一番いやなタイプの男だわ~~と思いながら読んでた。「くらわんか」はアレルギーの話が出た時点であっ…って思ったけど、男側が気楽な関係だと思ってても女の方はそうとは限らないよねという話だった。
↑のドイル短編「マスグレーブ家の儀式」で、ホームズが「男は女が自分への愛を失っていることに気付かないものさ、自分は女にひどいことやっててもね」みたいなことを言ってたけどわりと真理だなと思う。「薬缶」や「枕香」も、女を積極的にバカにするというより当然のように軽く見てたら相手は思ってたよりずっと憎しみを募らせてたって感じ。

・風野真知雄「逃がし屋小鈴」


女だてらシリーズ久々に読んだら本格的に逃がし屋になってたらしい。メインキャラの日の助の盗癖とかまったく解決してないけどこのままいくの?今後役に立ったりするんかな?
そして小鈴父…完全に宗旨替えなの…?大勢の人間焚きつけといてそれはないだろお前…寝返ったと見せかけて潜伏作戦とかそういうんじゃなくガチだよねこれ?いやまだ可能性あるのか?ええ~…?
現時点ではとにかく危ない男として描かれてる遠山の金さん、今後どう動いていくのか楽しみ。

・有栖川有栖「虹果て村の秘密」


少年少女の探偵物語。明日香さん含め、三人ともフランクに仲良くやってるのが微笑ましかった。

・アーサー・コナン・ドイル「シャーロックホームズ全集5バスカヴィル家の犬」訳:小林司 東山あかね 注・解説:高田寛


ホームズシリーズの中でも特に有名な長編やっと読めたー!
「バスカヴィル」って濁音が多くてなんか仰々しいしゴシック風悪徳貴族が所有する秘密兵器処刑用番犬みたいなイメージばっかりあったけど正しくは「バスカヴィル家の(人間を狩る)犬」だった。
この二人もしかして夫婦なのでは?とはわりと序盤から思ってたので当たっててうれしい。しかしそれで誰が警告の手紙を書いたのかまでは頭が回らないのでやっぱ私には読者参加型謎解きとか絶対無理だなと思う。二度盗まれたブーツの謎はなるほどな~って感じだった。

・乃南アサ「鎖」


なんか滝沢がだいぶいいオッサンになってた。この人一巻では嫌な印象のまま終わったけどなんか知らんまに実はいいオッサンポジに移ってるよね…でも貴子も同じ感想言っててちょっとホッとした。滝沢さんは音道がいないとこではけっこういいオッサンなんだからもっと本人に言ってほしい。でも本人に対しては素直になれないのがデカオッサンの宿命か。非行少女を説得するところはいいオッサンだった。

個人的には監禁パートが長く、そのわりに音道がほとんど活躍らしい活躍できてなかったのが残念だったなあ。説得を頑張ったってことかもしれないけど。占い師の家で四人が異様な殺され方をした、っていう凄惨な事件のわりに犯人側がちんぴらに毛が生えたような夢見がちおじさんってのも。ホームレスやサラ金業者に変装したり忍者みたいに小型カメラを取り付けたり警察の有能っぷりの方が目立って、犯人側が暴力だけの無能集団に見えてしまった。

というか最後まで読んでも警察を誘拐するメリットがまったく分からなかった。死体の発見を遅らせたくても貴子を攫ったら同じことだし、結果的に貴子経由でボロボロ手掛かり与えちゃうし、死体を隠蔽する努力もしてなかったし、誘拐するくらいならまじで殺す方が簡単だったろう。
カヨコの誘い方はかなり強引でかつ独断でやったぽかったし、本人が無意識だったかは分からないけど、なんだかんだ最初から貴子に助けてもらいたかったんかなあ。無理やり巻き込むことで今の境遇から助けてもらいたかったのかもしれない。身をていして守ったのも積極的に見張りにも付いたのも、そういう意識が根底にあったからなのかも。

◆という読書感想文でした。

ひさしぶりの読書感想文

2019.10.03 19:25|読書感想文
8月9月と続けてあんまり読めなかった。10月はいっぱい読みたい。
◎ネタバレ注意◎

・乃南アサ「花散る頃の殺人」


ものすごい謎やトリックが出てくる訳じゃないけどやっぱり女性刑事目線の殺人事件はあんまりないから新鮮で楽しい。というかしんみり切ない系が多いのかな。安曇との気楽な関係もいいしもう八十田とくっついちゃえよと思った。夫婦で機動隊カッコイイし。

・アーサー・コナン・ドイル「シャーロックホームズ全集3シャーロック・ホームズの冒険」訳:小林司 東山あかね 注・解説:高田寛


三巻にしてめちゃめちゃ分厚くなったのでビビってましたが、中身は短編集で今回も読みやすかったです。
娘の持つ財産目当てに娘が婚期を迎えるころに妨害を企む父親の話が複数あったけど、この時代こういうのは普通…って言ったらあれだけどわりとポピュラーな動機だったんだろうか。今でいう保険金殺人的なノリで。

・風野真知雄「白金南蛮娘殺人事件」


シリーズ飛ばし飛ばし読んでたからずっと見守ってたわけではないんだけど、やーーーっとおゆうと坂巻くっついたかー!長かった!最後の婚礼はあっけないほど簡素でもうちょいなんかやったれやと思ったけど、まあ片方が過去に色々あった忍者だししょうがないよね…。そんでしばらくメインの二人は下がって次作からは別の新人がくるんかな。読みたいけど集めるのがしんどそうだ。

・小川糸「キラキラ共和国」


やっと読めたツバキ文具店の続編。前作の細かいこと忘れちゃってたけど今回も温かくてきれいな話だった。善人が多すぎてきれいすぎる感はあるけど、このシリーズはそういう癒しの空間として読みたい。
盲目の少年の手紙とか自分が母親なら一生の宝になること間違いなしだし、お客さん達のその後の反応がめっちゃ気になるけど、そういう「感謝されるパート」をあえて見せないのが押し付けがましくていいところなのかもしれない。

・吉永南央「紅雲町珈琲屋こよみ/その日まで」


和小物とおいしい食べ物、の部分は↑のツバキ文具店と共通してるけど、人の汚い部分だったり空しさも描かれてるのはこっち、みたいな印象。主人公はおばあちゃんだけど気持ち的にはすごい若いしそこまで達観してないし、お年寄りになってもまだまだ迷うことってあるんだなあって感じ。

・三津田信三「白魔の塔」


これは「戦後の日本を支えた過酷な職業を体験しつつ全国の怪異を巡っていこう」シリーズなんだろうか。灯台守の説明や歴史的背景のお勉強パートが多かった。興味深かったけど、肝心の怪異がほぼ第三者の回想で語られて灯台というより森や村の話中心だったのはちょっと拍子抜け。結局モトロイさんが灯台の仕事してるとこほとんど見られなかったし。
いやでもタイトルはあくまで「白魔の塔」であって「灯台」ではないから、塔に見まがうほどの怪異そのものを指してたってことなのか。しかしそんな少女に想われてこの先モトロイさん生き残れるんだろうか…。かといって迎えに行ったりしたら灯台長の二の舞になりそうだし、すっぱり灯台守の仕事を辞めたのは正解かもしれないけど、今後海の近くには行けなさそう。

・米澤穂信「王とサーカス」


王族の大量殺人というショッキングで劇的な事件が起こったと思ったら、ほとんど関係ない別のところに着地した。その点を地味だとか拍子抜けとか感じてしまうことが、まさに「悲劇を消費している」ってことなんだろうな。王宮事件そのものは実際にあった話なだけに。
大刀洗が主人公の話だからそんなに甘い話じゃないとは分かってたけどやっぱサガル少年つらい…。大刀洗がたまたま真摯な記者だからよかったものの、サガルくんの世界への認識はそう間違ってないと思うだけにつらい。世界は酷いところだと分かってるのに、一方で大刀洗のような存在をほんの少し期待したりしなかったり、誰と触れ合っても裏切られたような気持ちでこの先生きていくのかなぁ…。

・吉永南央「名もなき花の」


斜め読みしてたのもあるけど実に入り組んだ関係だった…。ミナホも軽率だけどやっぱ根本的に悪いのは藤田。けど藤田本人もここまで事が大きくなるとは思ってなかったんだろうな。猜疑心だらけで誰とも分かり合えない共犯関係、この状態でよく何年もつるんでたと思う。

ていうかゆきのさんて一巻ラストで息子夫婦んとこに引っ越すみたいな話なかったっけ?まだ先?それともシリーズ化することになって中止になったんかな。

・今村昌弘「屍人荘の殺人」


話題になってたので借りてみた。最後の選評も読んだけど「新しいクローズドサークルもの」という評価でなるほどなーってなりました。大学生男女によるいざこざよりマダラメ機関という中二かっこいい名前のバイオテロ集団の今後の方が気になっちゃうんだけど、そっちも首謀者は早々に退場して終わってるからいいのか。いいのか…。

個人的にこういうミステリで見取り図とか部屋割りとか見せられても全然覚えられないし見返したりもしないんですが、この作品は部屋割りのへのゲスい思惑が初期に明かされるので興味深く見れた、登場人物の意図が見取り図からも読み取れるというのが新鮮なポイントだった。AはBを狙ってるのか、CとDはターゲットから外れてるからまとめられたのか…等々。立浪は主人公目線ではわりといいやつっぽく見えるんだけど、この部屋を自分で選んだならやっぱ相当ゲスかったんだな…と思ってしまう。

気が強くて前回参加者の高木、妹が最近亡くなったという管理人、こういうのは意外と主人公が犯人説で葉村を怪しんでたので真犯人は驚いた。犯人の動機は作中では特に匂わせる描写なかったと思うけど、以前有栖川有栖の話で「動機のあるなしはどうでもいい、初対面で無関係のように見えて実は過去に因縁がありましたとかいくらでもやれる」とかいうエピソード思い出した。

・連城三紀彦「処刑までの十章」


初めて読む人。不倫、泥沼三角関係がテーマになってるからかとにかく重苦しくて全体的にどんよりしてた。不倫ってのはあんま好きなテーマじゃないけど、この疑心暗鬼、思考と妄想が迷走に迷走を重ね何も信じられないって雰囲気は不倫ならではなのかもしれない。
思わぬところで放火事件とバラバラ殺人が片付いてしまったけど、結局夫は勝手に巻き込まれたように見せられただけで自分で姿をくらましただけ、ってことでいいのかな?はがきの五時なんちゃらが日付と寺の場所を表すというのも分かったけど、夫が言ってた「女の単位」と章タイトルはどういう意味だったんだろう…。

◆という読書感想文でした。
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