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湊かなえ四作品

2016.12.20 21:05|読書感想文
礼によってネタバレ注意で~す。

◆白ゆき姫殺人事件


・これはミステリーや謎解きではなく、ひたすら人間の汚い部分を描きたかったのなかなあ。
インタビューが真相へ繋がっていくのかと期待していたのにまったくその気配がなく、悪意を以て長々と語られた関係者からの容疑者の幼少期エピソードは、ほとんど真相に絡まなかった。真相の種明かしはあまりにもアッサリ。というかライターそのものがゴミだった。
終盤のSNSパートや週刊誌で出てくるのはほぼ既存の情報で、それ以外は人間の汚い内面しか見るところがない。
大衆が「こいつは攻撃してもいい」と判断すると、小さなこともほじくり返し、ちょっとした行動を邪推し、悪い方に解釈して叩きまくる。元々悪い印象を持っていた人はもちろん、親しい人であっても擁護するていで情報をばらまき、それに乗じて自分を正当化したり目立とうとする。
…という、常にサンドバッグを探してる現代の炎上社会を描くのが目的なら、成功してるんだと思う。

それにしたって、そんなのをわざわざ文庫本で読みたかった訳じゃない。
炎上する掲示板やSNSの悪いところを、ただ一般向けにソフトにして長文にしたというだけで、「お話」にはなってないって感じ。
2ちゃんとかああいうところを真面目に読むと本気で頭おかしくなりそうになるし、ああいう場に似た空気のあるこの本は、正常な人はあんまり読まない方がいいと思う。面白い面白くないではなく、不快。

◆サファイア


・最初の「真珠」はふぅ~んって感じであんまり期待しなかったんだけど、それ以降はだいたい好きだった。
前から何回か書いてる気がするけど、菩薩のように無条件に人を愛せる人にはなろうと思ってもなれるもんじゃないけど、自分の汚いところを認めつつ、なるべく善人でありたい、優しくしたい、と思える人も、既に十分優しい人だと思う。「ルビー」の姉妹はそうでした。

・「猫目石」は良いのか悪いのかよく分からないブラックなオチですが、なんだかんだで素直に「この家族がうまく行って良かったな」と思ってしまう自分がいる…。けど猫おばさんは何故恩人である一家をストーカーしてそれぞれに告げ口したんですかね?猫探しの一件で「幸せそうな家族を見せつけられた、バラバラしてやりたい!」ってことかな。

・「ムーンストーン」も好きだった。
こういう友情ものでも涙腺が緩んでしまうのは歳のせいなのか。
オチについては真っ先に考えるべきトリックだったのに、すっかり抜け落ちてて素直に驚きました。素直に「すっかり克服できたんだね、恩返しできて良かったね」と。

・「サファイア」「ガーネット」の流れも良かった~。
特に「ガーネット」はちょくちょく涙ぐんでた気がする。
確かにどうしようもなく性格悪い女ってのはどこにでもいるんだけど、当然だけど「そんな人ばかりではない」。同じ経験をしてもまったく違う受け取り方をして、良い方向に行く人だっているし、何が人を救うのかはその時にならないと分からない。
まあ綺麗にできすぎ、うまく行きすぎといったらそうなんだけど、お話なんだからこういうのもいいよね。

◆少女


・「人が死ぬところを見てみたい」と思った少女たちが、老人ホームや病院で死にそうな人に触れていく話。というあらすじを読んで、まず「夏の庭 The Friends」を思い出した。
「夏の庭」の内容はあんまり覚えてないけど、不純な気持ちで出会った「死にそうな人」と交友を深めるうちに仲良くなって…という感動路線みたいな話だった気がする。だからこの作品もそういう系なのかな?と、思ってたんだけど、「少女」はどっちかというと少女たちの成長と友情の方が中心で、なおかつ湊かなえらしい毒もしっかりある物語でした。

・内心お互い不満を抱いてる…というか軽くバカにしてるのに、普通の女子高生らしく振る舞うためには友達がいる。だから親友を続けてる。っていう、どこか歪んだ友情にすごく覚えがある…。
でもすれ違う前の二人の友情はすごく純粋に美しくて羨ましかった。二人が離れて初めてお互いのこと考える、特に敦子が由紀のことを理解していく過程が良かったな~。不器用じゃなくて気が利かないだけとか、利き腕じゃなくても左手の握力がないことの辛さに気付くとことか。由紀も由紀で、「握力がないからしょうがない」じゃなく、だったら工夫して他のやり方を考えてみよう、と気付くとこが良かった。
二人が別々の場所で時々お互いを想いながら、もりもり成長してくのが見てて楽しかった。
それぞれの視点で見ると、やっぱ敦子のが家族に恵まれてるぶんずっとマシだし、精神的な弱さを感じたな。由紀は家族からしてばらばらで、その割に何事も要領よくシッカリこなすのはスゴイと思った。

・二人が出先でいつバッタリ出くわすのか、タイミングによっては更にこじれるんじゃないか、ってとこや、援交の疑いで裏サイトに書かれるんじゃないかとか(特に敦子とおっさん)はかなりヒヤヒヤさせられましたが、そのへんは何事もなく終わって良かった…。敦子&おっさんの援交疑惑なんか書かれたら二人とも立ち直れないぞ…。

・そうやって綺麗に収まったと思いきや、因果応報地獄に落ちろを最後にキッチリやってくるのが湊かなえだなと思った。
最初三条を強請ったのは牧瀬の方かと思ったんですが、告発したのは「少女」ってことだからまあ、由紀なんでしょうね。湊かなえなら由紀を綺麗で善良な少女にしておくはずがないし、由紀ならやりかねない。っつーか湊かなえならやりかねない。

まあセーラが死んだのは敦子が裏サイトに書き込んだせい、ってのもあるし、それを敦子に見せた由紀も完全な潔白じゃないんですが。
けどセーラの件は抜きにしても、由紀が三条のオッサンにされたことを黙ってる道理はないんですよね。情報をエサに変なことされたのは事実だし。
いや、セーラ云々はそこで名前と事実が読者の中で繋がったってだけで、由紀&敦子には関係なく、告発は完全に由紀の金目当てか。冒頭シオリの遺書を受けて「イミ、わかんない。」「どうしてこんなことになっちゃったのかな。」って書いてるのは敦子視点だと思うし、三条告発に敦子は一切絡んでなさそう。元々ドライな関係ではあるけど、自分が絡んでたら敦子ならさすがにもうちょっと動揺してたろうし。
由紀、あるいは由紀&敦子がそれぞれの恨みから結託して三条告発→シオリを追い詰めるという計画だったらエグいなと思いましたが、そんなことはまったく関係なく、由紀が純粋に三条に金をたかっただけなんでしょう。が、そっちの方が尚エグい。個人的な恨みなどはまったく関係なく、それでシオリが自殺に追い込まれたのならまさに「因果応報」でゾクゾクします。
最後に人が死ぬなんとも言えない微妙な読後感ですが、私はこういうの割と好きです。

◆母性


・母(おばあちゃん)が愛に溢れ、無償の愛を捧げる聖女のような人だったことが、悲劇の始まりだったのか…。
母手記を読むと最初から歪んでてある種の狂気を感じるんだけど、それにしたって相当辛い境遇でよく耐えてると思う。
けど次に娘視点を読むと、もう娘が不憫で不憫で、たびたび涙ぐみました。一向に距離が縮まらずぎこちないのに、とにかく「母に愛されたい」と願い、尽くすところだけはそっくりというのが泣ける。
けど時々怒りを爆発させるのは父譲りなのかな。母がとにかく言いなりで読んでる方はストレスたまるので、娘の方が時々反発してくれてスッキリしました。「お前らなんか豚と一緒じゃん! 今日のエサはやったんだからもう帰れ!」ってやつとかうまいこと言い過ぎワロタ。まあこれがこの直後悲劇に繋がるんですケド…。

・田所父はな~。
低いところで株が上がったり下がったりでよく分からないなと思ってたら、最後の不倫は最低の一言に尽きる。しかも「母のため」を言い訳に手放さないんだからなお最低。「でも母はお嬢さんだから離婚したら生きていけない」っての納得できるのがつらいところ。つっても祖母にいびられても農作業も家事も介護もやる、やれば基本的になんでもできる母親だから、経済的にはけっこうやっていけると思うんですよ。
けど「褒めてくれる(かもしれない)人」が身近におらず、ギクシャクしてる娘と二人きりで暮らすことはできるのか、と考えるとどうだろう。田所一家に何度も「勝手に上がり込んできて迷惑してる」と言われていびられ続けても、「だったらこんな家出て行ってやるわよ!!!!!!」って発想が一度も出ないのが不思議でなりませんでした。旦那は長男だから、跡取りだから、ってことを置いといても、あそこまで言われたら売り言葉に買い言葉で一言くらい出てきそうなもんなのに。とにかく「認められなきゃ」「気に入られなきゃ」と必死。

結局母(ルミ子)は母と同じ専業主婦であり続け、「上の立場」の人に愛されなきゃ生きていけない人なんでしょう。そして「下の立場」である娘からの愛は不要なので気付かない。失敗の原因は全部「下」へ押し付けてしまう。「上」の人を否定することは許されないから。
「可哀そうな子にも平等に優しく」とかなんとか言ってましたが、ルミ子本人が一番そういった上下関係、というかカーストを気にするタチだったんでしょう。
…まあそれにしても父も最低ですけどね。けど元々ルミ子からしたって結婚するキッカケは「母が気に入ったから」って部分だし、父がルミ子に興味を持ったのも母の受け売りの台詞。元々うまくいくはずのない夫婦だったんだろうなあ。

・「母」は最後に清佳の名前を呼んだけど、その後心を入れ替えて娘へ無償の愛を捧げたのかと考えると、そうでもないんでしょうね。
歪みや狂気が見える「手記」は事件後に書かれたもので、娘視点とはちょこちょこ食い違うところもあるし。娘視点では母は時々酷いことを言ってるし。
最後になっても「おばあちゃんが喜んでくれる」=「母の悲願を果たすことが出来てうれしい、お母さんが私(ルミ子)を褒めてくれる」ってことだし。そういう歪みも含めて清佳は受け入れているけど、でも「母親」としては反面教師でしかないんだろうなあ…。
ルミ子、田所一家とクズばかりでしたが、とにかく清佳が「バカ親」にならずに済むことを願うばかりです。

◆…という湊かなえ四作品感想文でした。
これだけ読んだらそろそろ次いこうかな?
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